『世界は分けてもわからない』

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

福岡伸一さんの科学エッセイ、とでも言うのかな。
ずっと気になっていた著作だけれど、面白かった。
結論は明確で、まさに最後の1行に凝縮されている。
『世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである。』
分けてもわからないと知りつつ、分けてわかろうとする、その感覚が大切なんだろうね。
わかると思うのは傲慢。
わからないと達観するのは知的怠慢。
それを知ってなお、わかりたいと願う人間の「知」の欲求は、本当に奥深い。

『為替のしくみが基礎からわかる本』

為替のしくみが基礎からわかる本

為替のしくみが基礎からわかる本

銀行の3大業務の1つ、為替。
とてもシンプルな業務だけれど、「為替」という言葉はイメージを想起しづらい。
そういう意味では、為替のポイントを分かり易く説明していると思う。
ただ、シンプルすぎるが故に漏れ落ちる本質というものもあるかもしれない。
まあでも、大筋理解できる筋の話です。

『日本の殺人』

日本の殺人 (ちくま新書)

日本の殺人 (ちくま新書)

随分時間がかかってしまったけれど、昨晩読了。
寝る間際に読もうと思ってベッドサイドに置いたら、著作が眠りに入ってしまった。
それにしても、この著作は深い。
相当に考えさせられることは間違いない。
「殺人」というフレーズが醸す様相は、この著作で大きく変容せざるを得ない。
同様に死刑や戦争を「殺人」という断面から考察しているが、
シンプルな洞察の中に深い思索が伺える。
個人的には、著者の河合さんと辺見庸さんの対談などを見てみたいものです。

『思考の整理学』

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

遂に買ってしまった。
「東大・京大で最も読まれた本」とか言われると、本当は買いたくないけれど。
非常に簡潔に、分かり易い比喩を多用しながら「思考の整理」を方法論として展開している。
ただ、所謂ノウハウ本とは一線を画していて、学びや気づきの多い著作なのは確かだ。
「How」ではなくて「What」を、
つまり「『思考の整理』とはそもそも何なのか」を書いているのが、その理由だと思います。

『ウルトラ・ダラー』

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)

かの手嶋龍一さんによる小説。
フィクションとノンフィクションの狭間にあるリアリティが凄い。
冒頭では小説家の小説ではないが故の乗り切れなさがあったけれど、
迫真のストーリー展開と確かな取材力、インテリジェンスの輝きは図抜けている。
本音を言えば、ラストだけは勿体ない印象を持ったけれど、非常に面白い小説です。
佐藤優さんの興味深い解説も必読かなと。

『たのしい写真―よい子のための写真教室』

たのしい写真―よい子のための写真教室

たのしい写真―よい子のための写真教室

現代の日本を代表する写真家の1人、ホンマタカシさんの著作。
ホンマタカシさんと言えば、透明感のあるクリアな写真のイメージだ。
丸みがあって光の多い画を多く撮る人、という印象を持っている。
デジタルカメラの普及によって、写真という媒体は非常にポピュラーなものとなったけれど、
その一方で写真を観る/読む/味わう/深く愉しむといったことは、あまり意識されない。
写真という媒体を、ざっくばらんに眺め直してみるには良い著作だと思う。
端的に面白いしね。ダミー・ブレッソンのワークショップなんて、非常に良いです。

『クルマは家電量販店で買え!―価格と生活の経済学』

クルマは家電量販店で買え!―価格と生活の経済学

クルマは家電量販店で買え!―価格と生活の経済学

前作『スタバではグランデを買え!』の続編。
相変わらず非常に明快で面白い。個人的には前作より良いと思う。
環境税/排出権取引に関する提言なども具体的で示唆に富んでいる。
こういう思考は、経済に対する関心の有無は別にして、非常に有益です。